現在の日本の課題
政府が主導して推進している働き方改革は報道などで見聞きすることが多く、残業時間の規制や雇用形態による賃金の格差を是正する、多様な働き方を認めるなどを行うものという印象があります。
実際に対応している企業も少なくありませんが、改革が必要になった背景には働き手の不足と生産性の低さがあり、この改善が大きな目的になっています。
出生数は低下し続けており、その影響で少子高齢化が加速して全体に対する生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の割合が減少していることが現在の日本の課題です。
また、日本人は勤勉であると言われている一方で労働生産性は最低水準になっており、この原因が長時間労働にあると考えられています。
生産性だけでなく労働者の健康にも影響する問題で過労死するケースもあり、改善が必要です。
子供を持ちにくくなる原因
これらの問題に対する取り組みには、『今まで労働していなかった人を働き手として参加させる』、『出生数を上げて将来の働き手を増加させる』、『生産性を向上させる』などがあります。
現在具体的な指針が出ているものは、雇用形態ではなく労働内容で賃金を決める同一労働同一賃金、長時間労働を是正する、賃金を引き上げて生産性を向上させる、の3つです。
パートや派遣、契約社員などは正社員と比べて賃金などが低くなっており、これが主婦などが労働を行う際の障害の1つになっています。
日本では一度就職に失敗すると再起が困難な状況にあり、就職氷河期の年代では非正規雇用が多いため収入が少なく、これが子供を持ちにくくなる原因にもなっています。
これらの問題があるため、業務内容や職責等に違いがなければ給与や手当、福利厚生などを同じにするように求める取り組みです。
長時間労働に関して
長時間労働の是正はプライベートな時間を確保できるようになるため子育てができるようになり、健康を保つこともできます。
心身の負担が減ることで単位時間で見た生産性を向上させることができ、女性や高齢者でも仕事ができる環境を作ることが可能です。
これまでは労働基準法で月の残業時間は45時間、年間では360時間とされていましたが、36協定で合意されていればこれを無視しても罰則がありませんでした。
この改善の指針では、合意があっても年間では720時間まで、6か月間の平均は80時間以内で1か月では100時間未満にしています。労働基準法の原則を超えるのは年に6回までとされています。
ただし、実際の労働の現場ではこの上限は今まで過労死が認定されていたラインであるため、健康を保つための基準にはならないという疑問の声が多いです。
単に残業時間を減らして生産性を向上させるだけでは社員の収入は減ってしまう問題が出てしまうため、それを補うように年に3%の賃金の引き上げを行うことも目標にしています。
大企業に見られる、下請けの受注額を削減して自社の利益を上げるような下請けいじめを改善も検討されています。
政府の思惑とは逆行する企業も
柔軟な働き方ができるように、テレワークに代表されるような場所や時間の制約を受けない方法を推奨したり、これまで禁止されていた副業を解禁することなども取り組みの1つです。
このような働き方改革が進められてきていますが、実際に対応しているのは企業の経営陣であるため、政府の目的とはずれた形になっているケースも見られます。
以前よりも劣悪になったと労働の現場から悲鳴が上がっているところもあり、明確な法整備が必要です。
以前より劣悪になった会社の例
例えば同一労働同一賃金の場合、政府の考えは正規雇用に非正規の基準を合わせることですが、この逆を行っている場合があり、今までと同じ業務を行っているのに収入が減らされてしまう正社員がいます。
残業の是正では、企業が強制的に帰宅させるようにしているものの、作業量は以前と変化がなく、生産性を向上させるだけで対処できるものではないため自宅に持ち帰ることになり、以前よりもワークバランスが乱されています。
テレワークの場合、事業所以外で労働することが問題の温床です。
以前からトラブルになっている裁量労働制が不当に適用される場合があり、目的である自由な働き方にはならず、常に企業に拘束され、労働時間も長くなるなどが既に顕在化しています。
副業の解禁に関しても、残業の上限が過労死ラインであるため実際の環境には変化がない、あるいは持ち帰りが発生しているので行っているだけの余裕がない人が多いです。
また、労働者も無理な副業を行えば心身の負担が増加して本業に影響するだけでなく健康も損なってしまうため、残業時間を是正した意味がなくなってしまうことが問題です。
働き方改革を行っている企業からは効果が出たとする声もありますが、経営陣の求めるものと政府や労働者の求めているものが一致しておらず、現状では誰のための改革なのか分からなくなってしまっているケースもあります。
本来の目的に沿った取り組みにするには、指針を示すだけでなく早期な法整備も必要であると考えられます。
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